リチウムイオン電池内部の交換電流_No.10

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第7回コラムで化学反応のパターンをご紹介しました。今回は安定的に保管されているリチウムイオン電池内部で起こっている可逆な速度論的反応についてお話します。

回路をつないで充放電している時のリチウムイオン電池内部では、図1の様にリチウムイオンが正極から負極へ(充電)、または負極から正極へ(放電)と移動しています。これは皆さんご存知の通りだと思います。

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では、回路をつながず安定的に保管しているリチウムイオン電池内部ではどうなっているでしょうか?実は、少量ですが図2の様にリチウムイオンが正極及び負極に脱挿入しています。この時のリチウムイオン脱挿入速度は同じであるため、見かけ上リチウムイオンが移動しておらず、電池外部から見ると電流は流れていません。しかし、少量とはいえ実質的な脱挿入であるため、電池内部の電極-電解液間で電流が常に流れている状態となります。この電流の事を交換電流と呼びます。

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この交換電流、すなわちリチウムイオン脱挿入反応は温度や電極-電解液間電位差などの要素によってその速度が変わり、双方向の速度の関係が全体の流れの方向を決めます。このような反応を可逆な速度論的反応と呼びます。また、双方向の速度が等しくなって見かけ上変化しなくなった状態を平衡と呼びます。安定的保管状態のリチウムイオン電池はこの平衡状態になっています。第4回のコラムでご紹介した開放端電圧は、この平衡状態の電池電圧のことです。

この交換電流の大きさと向きを計算する式としては、図3のバトラー・フォルマー(Butler-Volmer)の式が挙げられます。リチウムイオン電池におけるバトラー・フォルマー式は電極でのリチウムイオンの脱挿入を対象とし、リチウムイオン挿入反応がカソード電流に、リチウムイオン脱離反応がアノード電流になります。
この式より、図2のリチウムイオン脱挿入速度のバランスを崩して交換電流を特定方向の流れに変える為には、電極過電圧ηを生じさせる必要がある事がわかります。

img_clm_10_030.png

リチウムイオン電池の充放電の本質的な意味は、外部の回路によって電池内部にこの電極過電圧ηを生じさせるという事です。そしてバトラー・フォルマーの式に基づいて特定方向へ向いた電流を電池の外部から見て、私達は充電電流とか放電電流と呼んでいるわけです。

リチウムイオン電池について
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