近年、新エネルギー(再生可能エネルギーから大規模水力発電と海洋エネルギーを除いたもの)の電力系統への導入が急速に拡大しています。
一方で、新エネルギー特有の課題が徐々に顕在化してきました。日本では、新エネルギーに占める太陽光発電の割合が約9割となっており、世界主要各国の約5割と比べて非常に高い水準です(IRENA報告書の2017年のデータより)。その結果、電力需要の少ない休日の晴れた昼間に太陽光発電が余剰するようになってきています。
この余剰電力の受け手として近年では各種蓄電池が注目されてきており、その有力な候補の一つは電気自動車等に使われるリチウムイオン電池です。現在この分野で検討されているのは、多数の所有者によって地理上分散的に存在する蓄電池を、通信技術で統合連携制御するバッテリーアグリゲーション技術です。
ところでリチウムイオン電池は、その使用履歴に応じて性能が低下する劣化と呼ばれる現象が起こります。この劣化はリチウムイオン電池の充放電エネルギー効率を低下させる性質を持っており、余剰電力利用の際のエネルギーロス、ひいては経済性低下へとつながります。
悩ましいのは、統合連携された分散蓄電池の個々の使用履歴がそれぞれ異なることと、おそらく将来的にはメーカーや種類もさまざまになるであろうことです。このような場面において、分散蓄電池による新エネルギー余剰電力利用の経済性を向上する技術の構築を目指し、私たちは劣化診断手法の研究開発に取り組んでいます。
蓄電池劣化診断・経済性推定に関するお客様からよくいただくご質問とその回答をまとめております。
Q
他の劣化診断と大和製罐の劣化診断はどこが違うのですか?
A
現在報告されている劣化診断のほとんどは、蓄電池の満充電容量または内部抵抗を診断してその健全性を判定するものであり、蓄電池の残価設定などへの応用が期待されています。これに対し当社の劣化診断は蓄電池の充放電特性をモデル化してさまざまな充放電条件でのエネルギー効率を推定するものであり、クラウドバッテリー(アグリゲートされた蓄電池)の運用経済性最適化などへの応用が期待されます。
Q
大和製罐の劣化診断研究開発はどのような状況ですか?
A
現在、大学や他企業と協力しながら劣化診断手法の基礎・応用検討および実証試験を進めています。これらの検討内容は公開可能なもの限定ではありますが、国内外の学会および論文で発表していきます。また発表内容やその関連情報については本ホームページにて順次情報提供していきます。
FFT(高速フーリエ変換)アナライザやFRA(周波数特性分析器)による交流インピ...
これまで、リチウムイオン電池の劣化現象として ・容量劣化(満充電容量の低下。SO...
※「リチウムイオン電池の劣化診断」については、コラム第14回(リチウムイオン電池...
3月16~18日に開催されました平成28年電気学会全国大会(東北大)にて、弊社よ...