劣化のタイプとしては、一定の温度で長期間保存する方法、充放電サイクルを連続的に繰り返す方法、満充電状態を長期間維持し続ける方法があります。
本コラムでは、容量劣化特性試験の試験項目についてご紹介します。
1、保存試験(保持試験および回復試験)
保存試験とは、リチウムイオン電池を一定の期間・温度で保存することで劣化を進め、その後の放電容量の減少を計測する試験です。
保存する期間は試験規格等によって様々であり、2日から1ヶ月程度、あるいは試験規格にこだわらなければ1年以上保存する場合もあります。保存する際の充電率は試験規格上50~100%であり、基本的には満充電状態に近い値とします。保存する際の温度は、試験規格上は室温~45℃程度ですが、試験規格にこだわらなければ60~70℃程度まで上げる事もあります。
ただし、保存温度を上げ過ぎると容量劣化特性試験ではなく環境安全性試験になってしまい、場合によってはリチウムイオン電池の発火に繋がってしまうので注意が必要です。
試験の厳しさ(劣化の進展の速さ、深さ)は、一般的に保存温度が高いほど、充電率が高いほど、厳しくなる傾向にあります。
放電容量の計測の仕方は保持試験と回復試験の場合で異なります。
保持試験では、保存前の放電残量(すなわち満充電容量と充電率の積)がどの程度残っているかを計測します。つまり、保存後ただちに室温に戻して放電試験を行った際の放電容量となります。
これに対して、回復試験では保存によって満充電容量がどの程度減少したかを計測します。具体的には、保存後に室温に戻して一度放電してから再度充電して満充電状態とし、そこからの放電容量を計測することになります。
2、充電維持試験
充電維持試験とは、リチウムイオン電池を一定の期間・温度で定電圧充電し続けて満充電状態を維持することで劣化を進め、その後の満充電容量の減少を計測する試験です。
想定される電池の使われ方の例としては、スマートフォンなどに充電ケーブルを長期間接続したままの状態が挙げられます。ただし、実際の機器では一般的に一定の安全率を踏まえた設計がされていますので、試験はより厳しい条件となります。
満充電状態を維持する点で充電率100%での保存試験と似ているとも言えますが、充電維持試験では定電圧充電によってごくわずかな電流を流し続けているので、過充電状態に近いギリギリの状態を維持する事になります。従って、期間と温度が同一の場合には一般的に充電率100%での保存試験よりも厳しい条件となります。
また、充電維持試験と同様の条件が電気的安全性試験の一部に採用されています。つまり、充電維持試験は安全性の観点からも厳しい試験ということになります。従って、容量劣化特性試験と言え、試験の実施には一定の危険性を伴いますので注意が必要になります。
3、サイクル寿命試験
サイクル寿命試験とは、リチウムイオン電池を繰り返し充放電する事によって劣化を進め、満充電容量がどの程度減少するかを計測する試験です。
試験方法は規格により異なりますが、満充電と完全放電を繰り返す定電流充放電試験か、あるいは特定の電流パターンを繰り返す方法となります。ただし、満充電容量は満充電状態から完全放電までを定電流放電することによって計測します。
試験時の温度は室温が多いですが、場合によっては温度を変えて実施します。試験サイクル数が500回など具体的に規定されている場合もあり、また場合によっては満充電容量が一定割合の減少を示すまでとされることもあります。
一般的には数百~数千回のサイクルとなります。
試験時の温度や充放電電流を変えると劣化速度が変わり、基本的には室温から乖離した温度で大電流充放電をすると劣化が速くなります。また、満充電容量は一般に温度を上げると上昇する一方、高温では劣化速度が速くなります。
今回は、容量劣化特性試験の試験項目についてご紹介しました。
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