電池容量および充放電効率の劣化による蓄電システムの経済性低下について_No.15

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定置用蓄電システムの場合、搭載されているリチウムイオン電池の劣化、特に電池容量と充放電効率の劣化は蓄電システムの経済性低下に直結します。今回この経済性低下がどの程度かを試算してみましたので、ご紹介いたします。

まず定置用蓄電システムは、昼夜の電力料金差を利用して電力料金の削減が可能です※1。ここでは東京電力「ピークシフトプラン」※2の料金設定に基づいて試算を行いました。このうち、夏季(7~9月)にはピーク時(午後1~4時)と昼間(ピーク時を除いた午前7時~午後11時)にそれぞれ蓄電池の電力量を半分ずつ放電するものとしました。

次に、蓄電システムの初期特性としては、放電電力量を10kWh、蓄電池以外の部分の効率を95%とし、蓄電池のみが劣化するものとしました。また、蓄電システムは一時間率(1C)の定電流で毎日1サイクルの充放電を実施することとしました。

また、現在販売されている定置用蓄電システムの多くは、搭載するリチウムイオン電池の放電容量(Ah)が初期の80%まで劣化した時点を寿命としています。そこで、80%劣化充放電曲線を図1のようにモデル化しました。このときの放電容量と充放電効率は表1の様になり、またリチウムイオン電池の充放電電力量は表2の様になりました。ここで、電池の充放電効率は96.0%から85.4%へと変化しており、劣化によって初期の約11%分低下しています。

img_clm_15_010.png

<図1. 80%劣化充放電曲線のモデル>

   放電容量   充放電効率(電池のみ)  電池以外の効率 
初期 100.0%  96.0%  95.0%
 80%劣化モデル  80.0%  85.4%  95.0%


<表1. 初期と劣化モデルの放電容量及び充放電効率>

  充電電力量(kWh) 放電電力量(kWh)
初期 10.42 10.00
80%劣化モデル 8.38 7.15

<表2. 初期と劣化モデルの充放電電力量>

以上の仮定に基づいて、年間の蓄電システムの電力料金削減効果を試算した結果は、表3の様になりました。

  夜間充電
電力料金
(年間)
放電電力料金削減 合計電力
料金削減
(年間)
夏季
(7~9月)
その他季
(10~6月)
初期 46246 38488 79143 71385
80%劣化モデル 37175 27531 56612 46968

<表3. 蓄電システムの電力料金削減効果 (単位:円)>

このように、80%劣化モデルの電力削減料金は初期と比較して約34%も低下することがわかりました。これは、表1に示した放電容量の低下(20%)、及び電池の充放電効率低下(約11%)のそれぞれ単独のものと比較して大きな値となっており、放電容量低下と充放電効率低下が相乗的に経済性低下に繋がることがわかります。

リチウムイオン電池の経年使用による劣化を避けることはできませんが、以前のコラム(第8回)の様に、使用環境等の条件によって劣化の進み方が異なる事が知られています。すなわち蓄電システムは、何年稼働したから搭載電池が何%劣化している、という推定が難しい製品です。
より経済的に蓄電システムを運用する為には、劣化の進みにくい条件下での稼働が重要であると共に、稼働中の劣化状態を精度よく推定してHEMSやBEMSなどのエネルギーマネジメントシステム※3で最適に蓄電システムを制御する必要があります。

以上を踏まえて当社では最適な蓄電システム制御を実現するため、リチウムイオン電池の劣化診断法の研究を進めております。

注:本コラム内容は特定条件下での試算結果であるため、製品・条件等の違いにより結果が異なる事をご承知おきください。

※1 (一社)電池工業会「リチウムイオン蓄電池まるわかりBOOK」 p7~8 (http://www.denchi.info/archive/knowledge.pdf)
※2 http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/home06-j.html
※3 (一社)電池工業会「リチウムイオン蓄電池まるわかりBOOK」 p11 (http://www.denchi.info/archive/knowledge.pdf)
リチウムイオン電池について
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