現在リチウムイオン電池は小型民生(スマホ・PCなど)、定置(家庭用・産業用)、車載など多岐に渡り使用されています。そしてこれらの電池には多くの場合に監視基板が取り付けられ、電池の電圧・温度が監視されています。
これら計測データからは、電池の運用可能範囲かどうかの判定が行われ、範囲外と判断されると電池の充放電が停止する機構になっています。
また、電池電圧とSOC(電池の充電状態)が1対1の関係にある事を利用して、監視基板から得られた電池電圧を元に充電状態が推定されています。例えばスマホのバッテリー残量アイコンはこの結果を元に表示されます。
SOCは、バッテリー業界の慣例で主に電流量(Ah)が基準となっていますが、電流量基準のSOC数値化には以下の代表的課題があります。
①電池の温度によってSOCのモノサシが変わる。
⇒基準温度付近でないとうまくSOCを決定できない。
②電池はエネルギー供給源であり、エネルギーの単位はWh(J)である。
⇒表示されているSOCは厳密にはエネルギー残量ではない。
①②の要素が複合して起こるトラブルの例として、突然の電池切れがあります。今年1月にネットで話題となった寒冷バッテリー切れ(第20回コラム参照)もそのひとつです。
①の解決策として、あらかじめ様々な温度でのSOCのモノサシを準備するという考え方がありますが、事前に準備するデータや監視基板そのものが増えたり複雑化するデメリットがあります。
また、②の解決策としてWh(J)をSOCのモノサシとする場合、充放電効率の影響(電池の内部抵抗や充放電電流値によって変化するもの)という新たな課題が出現します。
我々は充放電効率の劣化診断研究を進めながらこれらの課題に注目して活動して参りました。その中で、弊社の取組ではないのですが上記①②の課題にアプローチした、公開済みの研究報告※をひとつ見つけましたので、本コラムの末尾でご紹介します。
弊社では引き続き、これら課題との付き合い方を検討していきます。
※ http://www.ssken.co.jp/kihou/img/101/text/101_02.pdf